厳しい寒さが続くと、真夏のうだるような暑さが恋しくなる。酷暑の日が続くと、真冬の寒さが懐かしく思えてくる。
逆境に陥ったとき、周囲の支えを心からありがたいと感じる。しかし、順境になれば、感謝の
気持ちを失い、逆に他人への不平さえ口にするようになる。
勝手なものである。人間は過ぎ去ったことはすぐに忘れて、今おかれている状況に不満を抱
く。
暑さ寒さならいずれ時期が来て緩んでくれるけど、現実にはただ嘆いていても打開できないこ
とが少なくない。また、とかく不平不満を募らせるのが人情とはいえ、それでは心が暗くなる
ばかり。人間関係もうまくいかなくなるだろう。
大切なのは、つらいことも嬉しいことも、すべての体験とそのときの感慨を十分に噛みしめ、
一つひとつをしっかりと自らの糧にしていくことではないか。
そうしてこそ、困難には、今度も必ず乗り越えられると立ち向かう。困っている人がいれば、
自分が恩返しをする番だと進んで手を差し伸べる。そんな力強く、人間らしい生き方ができる
ようになるにちがいない。